来栖くんはあたしの必死な訴えに目を見開いたが、はっと笑いを吐いた。



「山田は俺と一緒にいれるって思ってたんだ?」


「そっ、そうだよ」


「ふーん」



にやにやする来栖くんがちょっと可愛い、とか。

口に出してしまったら怒って帰って行っちゃいそうだ。



「俺と2人きりになれるって期待してたんだーへぇー」


「普通するでしょ!」


「山田の分際で自惚れすぎじゃない?」


「分際って…!」


「こうやって俺に仕事を与えてもらえるなんて、今まで山田だけだよ?むしろ関わってやってるだけでも感謝しろ」


「ぐぎぎ…」


「なに“ぐぎぎ”って」


「悔しさで歯を食いしばってるの!」



匙を投げて告白をしたときは、関わりたくないと頑なに断られていたのに、来栖くんのほうからあたしに話しかけてくれてる事実は奇跡のようなもの。


しかもさらっと『今まで山田だけ』なんて嬉しいこと言ってくれちゃうし…、ずるいぞ来栖王子!



「無駄な時間を食ってる余裕なんかお前にないんだからさっさとやってこい」


「来栖くんも手伝ってよ!」


「明日の朝までにできてなかったら、」

「お仕置き!?」


「………嬉しそうな顔すんな。違うから」