「〜〜〜〜!」
「〜〜!」
がっしゃん、がちゃん!
バン!
「・・・。」
また、パパとママ喧嘩してるのかな・・・
「ぐすっぐすっ・・・。。」
静かになったリビングに響くお母さんの泣き声。
私はそっとドアを開けてリビングを覗き込んだ。
そこに広がっていた酷い光景は何年も経った今でも忘れられない。「ね・・・。おい、朱音!」

誰かの大きな声で私ははっと我に返った。

「ごめんなさい・・・。神崎さん、どうしたんですか?」

「・・・。朱音ちゃん、最近いつにも増してボーッとしてない?」

「そ、そんな事ないと思いますよ、、」

すると彼は訝しげに私の顔を覗き込んだかと思うと、パっと笑顔になった。

「そう?心配な事があったらいつでも言うんだよ。」

その言葉に私は少し心が暖かくなるのを感じた。

「はい、ありがとうございます。」

神崎さんは私の知り合いの人でモデルをしている。

私は事情があり、居候させて貰っているのだけど・・・。

「たっだいまー!!」

ひときは大きな声が玄関に響いた。

「おかえり、蒼くん」

この子は神崎さんの知り合いの子で、その子の両親とも海外を飛び回っているので神崎さんが面倒を

みているらしい。

「たっだま!!おねーちゃん!」

「おかえり、こだま」

この子は私の従兄弟の子だ。

この子の両親は小さい頃に他界し、今は私が預かっている。

2人とも可愛くていい子だ。

「あっ!仕事いかなきゃ!ごめん、朱音ちゃん、後は頼むよ。」

「はい、任せてください!行ってらっしゃい。」

モデルは毎日忙しいんだなぁ・・・。

それに比べて私なんて家事するだけだし。

早く大人になって迷惑かけないようにしないと。

神崎さんは親切にも施設に入れられそうになっていた私を引き取ってくれたのだ。

両親が離婚し、母親には隠し子、父親は酒に溺れていた。

私はどっちの方にも行きたくなかった。

幼い私でもそう思ったほど、私の家は冷たかった。

両親も私のことを引き取ることを嫌がった。

そんなんだったらなんで私のことを産んだの?

どうして私は何もしてないのに辛い思いをしなければならないの?

たくさんの思いが駆け巡ったが、幼い私にはどうこう言う権利なんてなくて・・・。

そんな時に神崎さんが条件付きで私を引き取ってくれたのだ。

その時、私は中学3年生だった。

幼いこだまも押し付けられて、私が途方にくれていた時。

もし、今神崎さんが私達のことを引き取ってくれていなかったら今頃私はどうなっていたのだろうか。

こだまはきっとこんなに伸び伸び暮らせていないはずだ。

本当に感謝してもし切れない。