あたしは、目が覚めると何故か遼のベッドの中にいた。

ふむふむ。何でここにいるんだ?さっきのは夢なはず。あ、全部が夢でここで寝ちゃってたのか。

遼の部屋を見渡すと壁に、あたしの制服がかかっていて、その下に大きなダンボールが1つ置いてあった。

ガチャッ…

遼「…葵。今日通夜で明日葬式だ。顔見に行くぞ。」

この言葉は、さっきの出来事が嘘じゃないことを表していて、

葵「っ、やだ!!」

どれだけ抵抗しても、遼には叶わなくて…

遼「ダメだ。行くぞ。」

葵「ヤダ!!ヤァダァ!!!!ヤダヤダヤダヤダヤダヤダ!!!」

無駄だってわかってて、ヤダヤダって駄々こねるけど、遼はそれでもあたしを肩に担いで近くの葬儀場まで連れてった。
棺桶の前でやっと降ろされる体。

遼「しっかり。現実を受け止めろ。いや、受け止めようとしろ。1人で無理なら、後ろから俺も一緒に受け止めるから。」

お母さんの顔を見ると、いつものバリバリの顔じゃなくて、お風呂のあとの顔みたいで、今にも起きそうで、あの頃みたいに、施設から帰ってきた時みたいに笑ってくれるような感じで。

…でも、それはもう無い。

それはもう、ここにいる人たちが泣いてることで十分に感じた。

とめどなく滝みたいに流れる涙。
…さっきあれだけ泣いたから、もう泣けないと思ったけど、案外泣けるもんだね。

離れたところに寄っかかってた遼に抱きついて、たくさん泣いた。
もう、一生分の涙を流したような感じもした。

泣き終わると、遼は帰るか。って言って、あたしの手を引いて家まで帰った。
遼のアパートに行くと、海外赴任中なはずの遼のパパとママがいた。

遼パパと遼ママには小さい時からお世話になってる。
…けど、やっぱりちょっと怖い。

遼パパ「中に、入りなさい。話をしよう。」

リビングでテーブルを挟んだ向かいに遼パパと遼ママが居る状態。
何を言われるかわからない。怖くて、遼を見ると、手を握ってくれて…覚悟した。何を言われても、泣かない…逃げない…!

遼パパ「葵、お前はどれだけ辛い思いをすればいいんだろうな…」

遼ママ「お母さんのことは、本当に残念だったわ。」

遼パパ「葵。お前住む場所、あるか?」

葵「…ない。」

遼ママ「やっぱり…」

…施設は、やだ。施設なんて、入りたくない…!!

遼パパ「なら、ここに住めばいい。」

遼「……は?」

遼ママ「遼は今ここで一人暮らししてるんだし、2人ともそのまま結婚しちゃえばいいのよ!」

遼パパ「とにかく、住民票はここに移しておくから。いいね?葵。」

葵「…何から何まで、本当にありがとう…!!」