「寝てた」


「友達と飲んでたら、終電なくなっちゃって……。泊めて?」


「そういうの彼氏に頼めよ」


「今、彼氏いないもん」


未幸は口を尖らせ、脹れっ面で俯いた。


「ったく……」


大袈裟な溜息を吐いて、顎で「上がれよ」と言った俺に、未幸はコロッと笑顔になって部屋に上がり込む。


「あっ、今日は彼女平気?」


「今更だろ」


そう、未幸はこういう奴だ。


だから俺も、未幸にはいつもこんな調子。


俺に今彼女がいない事は、敢えて言わずにおいた。