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「なぁ入江、モザンビークドリルって知ってる?」


休み時間に、隣の席の伊藤耕太が話しかけてきた。聞いた事もない単語だったけど、知らないと言うのも癪に障る。私は思い付くままに適当な答えを返した。


「モザンビーク製の、何でも穴を開けちゃう超高性能ドリルとか?」


伊藤は一瞬ニヤリとした後、眼鏡の奥の目をキラキラさせながら語り始めた。


「うん、なかなかいい発想だね。でも残念」


「あっそう。私はまた、スイスのヴィクトリノックスとか、アメリカのレザーマンとか、そういう類かなと思った」


ヴィクトリノックス、レザーマン、どちらも世界的に有名なナイフメーカーだ。ま、これも伊藤に教えてもらった知識だけど。