私がとても幼い頃は、父は自分で事業をし、それなりに裕福な生活ができるほどの収入を得ていた。


「結奈ぁ、お前はかわいいのぉ~。小遣いやろ!」
「おっちゃんありがとう♪」

あの頃は、物に不自由したことなかったし、父の友人や後輩などにとてもかわいがられて、何不自由なく育った。



今では

"そんなこともあったなぁ"

程度でしか思い出せないくらい昔で、短い期間だった。


物心がついた頃には、家は借金まみれで、父は毎日お酒に溺れ、外に不特定多数の女がいた。虫の居所が悪いと、母と幼い私を殴った。


――ガシャーン!!
――「ちょっと!子供が起きるやろっ!」
――「やかましいぞゴルァ!金出せやっ!」
――「あるわけないやんか!」
――ダダダダッ
――バーンッ!!!!
――「ちょっとやめて!」


毎日、恐怖に怯えながら過ごした。


私は、徐々に口数の少ない笑わない子になっていった。