「由姫、立てるか?」



手放しかけていた意識が、その声で戻ってくる。



顔を上げると、そこには理玖がいた。



さっき理玖から距離をおこうなんて考えてたけど、今はそれどころじゃない。



私は頷いて、腰を上げた。



だけど、思うように立てなくて、理玖の方に倒れ込んでしまう。



足を踏ん張ろうとするけど、体が言うことを聞いてくれない。



理玖はしばらく唸ってから手を打って私の肩にポンっと手を置いて早口で喋った。



「たぶん、俺、汗臭いと思うけど、我慢しろよ。飛ばすから」



その言葉の意味がわからず、首を傾げていると、理玖は私の方に背中を向けて座り込んだ。



「ほら、乗れよ」



これはおんぶされるってこと?



さすがに躊躇してしまう。



「早く!これ以上悪くなったらどーすんだよ!」



そんな理玖の怒り口調に慌てて、背中に体を預け、腕を首に回した。