お父さんへ



お久しぶりです。
思えばあなたに手紙を書くのは初めてかもしれません。
正直な思いを連ねたこの手紙をあなたは読んだら、いや読まずに捨てるかもしれない。
だけど私にはあなたにどうしても伝えたいことがあります。
どうか最後まで読んでほしい。



そちらの暮らしはどうですか。
温室暮らしに慣れていたあなたにとって苦痛以外の何者でもないでしょうね。
あれだけの証拠が揃って有罪になっておきながら、未だに謝罪1つせず、自分は悪くないと言い張っているあなたの娘であることをどうしたって私は情けなく思います。



昔からあなたは私に何度も言い聞かせていました。
お前には最高の将来を用意してやる。
あなたの言う最高の将来とは何だったのでしょうか。
お金持ちの男との結婚でしょうか。
何1つ不自由のない生活でしょうか。


あの日から私はいろんな人に出会いました。
あなたのせいで苦しんでいる人や、事件とは何も関係ない人にも。
みんな誰しも辛いことを抱えています。
それでも涙を拭いて立ち上がるんです。
前を向いて歩き出すんです。
壁にぶつかっても、どうにかしてその壁を乗り越えるんです。
私はたとえ裕福じゃなくても、そんな風に強く生きていけたら何もいらないと思います。
そしてそんな人生こそが最高な人生なのだと思います。

いい加減認めてください。
あなたが抱いてきた考えの全てが間違いだったこと。
あなたがたくさんの人を絶望の淵に追い込んだという事実を、そしてその愚かさを。
そして背負ってください。
その人たちの無念を。
あなたの命ある限り、罪を償い続けてください。


私はもうこの手紙を最後にあなたを恨むことをきっぱりとやめます。
恨みや悪意は何も生まないと学んだから。
そして生きてみせます。
私を愛し、支えてくれた人たちのためにも。


私の思いがほんの少しでもあなたの心に響いたらそれは本望です。


さようなら。体に気をつけて。


由姫






end.