顔を上げたら、前で透がにっこりとほほ笑んでいた。


その後ろで、美結が唇をかんで涙をこらえているような表情をしていた。


無意識に言葉が零れ落ちていた。


「ごめん透…。私、透とは付き合えない。
他に一緒にいたい人がいるの。

もう手遅れかもしれないけど、私は陸玖と幸せになりたい…っ」


涙はいつの間にか止まっていて、もう出なかった。


憑物が落ちたように、妙に頭がすっきりと冴え渡っていた。







会いたい。

さっき別れたばかりなのに。

陸玖、陸玖、その名前を呼びたい。

なんだよって笑ってほしい。

くだらない会話を一日中していたい。

好きだって、その声でもう一度聞きたい。



「行かなきゃ…」



勇気を振り絞ろう。
君に会いに行こう。
誰が認めてくれなくったって、
裏切られるかもと不安が消えなくたって、



そんなのどうだっていいんだ。



1日でも多く陸玖が私の傍にいてくれるだけでその先を強く生きていく糧になる。



もし間に合わなくて、すれ違ってしまっても私はやめない。



陸玖が私を想ってくれている以上に私は陸玖想ってる。



そしてこんな私のために怒って、泣いて、励ましてくれる人たちがいるから。