もちろん美結は気づいていると確信していたから、聞かれても特に驚きはしなかった。


私の中だけで今日の出来事をためておくには限界で、美結には話しにくいどころか、むしろ聞いてほしかった。


美結を自分の部屋に招き、ベッドの上に隣り合って座り、順を追って話した。


美結は特にいちいち驚いたり、茶化したりすることもなく、相槌を打ちながら聞いてくれた。


「まあ、大体予想はついとったとけどね」


話を聞き終わった美結の第一声はそれだった。


あっけらかんという感じで、私の方が拍子抜けしてしまうほどだった。


「な、なんで」


思わず率直に聞いてしまった。


「え、うちの感。で、由姫は本当に断ってしまうつもりなの?」


冗談をいうように笑ってそう答えると、急に神妙な面持ちになって逆に聞き返された。


つい昨日はあの大会の日に陸玖から受けた罵倒のことで美結に相談をしたり、励ましてもらったりしていたのに180度違った話題を話していることに不思議な気分になりながらもすぐに頷き返した。


迷う時間なんて必要ない。


これ以外に選択肢はないんだから。


今は正直陸玖への気持ちは強くある。


抱きしめられたり、手をつながれたり、優しい言葉をかけられたり、


そして好きだと言われたことが未だに私の胸を高揚させていることに間違いはない。


だけど、隠し通せる。


いつか消えてくれる。


だから


「うん」


頷いてから、しばらくして肯定の返事もした。


美結はそんな私の目をじっと見て、あっさりとした口調でこう言った。


「まあ由姫がそれならそれでよかけど。
うちも由姫が断るっていう気持ちもなんとなくわかるし。
由姫の人生は由姫のもんなんやけん好きなようにすればよか。
でも後悔はなかようにしてよ」


「あ、あの馬鹿も最近は前よりましな男になったし」


馬鹿とは透のことだ。


やっぱり部活にまじめになったことで美結の中で透の好感度は爆上がりしてるみたいだ。


だけど美結の言葉は、そこまでで一度途切れた。


「でも…ごめん、やっぱここまでは建前。
ほんとはこれ以上は言わんつもりやった。

でも由姫には嘘なんかつきたくないからさ。

こっからはうちの独り言と思って聞いて。
って言っても由姫は気にするやろうと思うけん、先に謝っとく、ごめんね。

由姫には由姫の思うように生きていってほしい。
でもうちはやっぱり由姫の幸せのそばに陸玖もおってほしい。
ずっと苦しんできた二人やから、だからあんたたちには一番好きな人と一緒におってほしい」