由姫はずっとあそこに来て、花の世話をしてくれていたんだろうか。
軽い気持ちでできる作業とは思えない。
園芸のことはよくわからないけど、ばあちゃんがよくやっていた作業をずっと隣で見てきたし、手伝ったことも何回もある。
夏の日なんてどうしてこんなことわざわざするんだと疑問に思うくらい、炎天下の下でじっと作業するのはつらかったものだ。
それを由姫はたった1人でやってきたんだろうか。
特に由姫は体が弱く、暑さにも弱かった。
きついなんてものじゃなかったはず。
どうして…
まだ予想でしかないが、きっと真実であるその事実は俺をしばらく停止させた。
由姫のことしか頭に浮かばなかった。
そんな俺をずっと何も言わずに見ていた2人だったが、ふいにばあちゃんが俺の肩を叩いてこういった。
「あんたその花の名前が知りたかとやろ?ばあちゃん花の名前は結構わかる自信があるけん、そこに連れて行ってくれんね」
「あ、う、うん」
もはや花の名前なんてどうでもよかったが、もう一度あの景色を見たいという気持ちがあってその申し出をありがたく受けることにした。
じいちゃんも一緒に来てくれると言い、3人で向かった。
歩いている間は何も話す気にはなれなかった。
ガードレールを自力で越えるのはばあちゃんは難しく、俺とじいちゃんが手を貸し何とか超えてもらった。
あの青と白の美しい光景は変わらずそこにあった。
ばあちゃんは興味深そうに咲き誇った花たちを見つめ、その名前を教えてくれた。
「これはセンニチコウやね」
「セン…ニチコウ」
耳慣れしないその単語を自分の口で繰り返す。
そんな俺を見つめたまま、ばあちゃんは無表情でずっと立ち尽くしていた。
そして決心したように固い表情で言った。
「あの子がこれ、したんやろ」
きっとばあちゃんはもうわかってる。
由姫のことを言っている。
ふとあの日のことを思い出した。
意図的にばあちゃんと由姫を引き合わせて、2人につらい思いをさせた。
ばあちゃんもしっかり覚えているだろう。
どんな気持ちでこの景色を見ているんだろう。
やっぱり嫌な気持ちだろうな。
自分の大切な息子一家を奪った男の娘が植えた花なんて、いくら植物が大好きっていったって素直に綺麗と思えるはずがない。
おもむろに俺はズボンのポケットに入れていたスマートフォンをとりだしてセンニチコウという言葉を検索にかけた。
トップに出てきた内容を見て、無意識のうちに手が小刻みに震えだした。
握っていたスマートフォンが俺の手をすり抜けて、花々の中に柔らかく落ちた。
千日紅の花言葉
色褪せぬ愛
気づかぬうちに涙が溢れていた。
由姫がこの花言葉を知って、この花を選んだかどうかは本人に聞かない限りわからない。
だけど、なんとなくあいつはそれを知ってこの花にした気がするんだ。
大会の日、由姫に何もかも忘れて幸せそうだと言って責めた俺を殴りたい。
嫉妬してあいつに酷な言葉をぶつけまくった俺を蹴り飛ばしたい。
由姫は何も忘れていない。
由姫は俺に知られずとも、この花たちを育て続けてくれたのだ。
俺が大切な場所と言って教えたこの場所は由姫にとって来るのもきつかったはずなのに。
俺はどうすればいい。
由姫のこの優しさに、勇気にどう応えればいいんだろう。
軽い気持ちでできる作業とは思えない。
園芸のことはよくわからないけど、ばあちゃんがよくやっていた作業をずっと隣で見てきたし、手伝ったことも何回もある。
夏の日なんてどうしてこんなことわざわざするんだと疑問に思うくらい、炎天下の下でじっと作業するのはつらかったものだ。
それを由姫はたった1人でやってきたんだろうか。
特に由姫は体が弱く、暑さにも弱かった。
きついなんてものじゃなかったはず。
どうして…
まだ予想でしかないが、きっと真実であるその事実は俺をしばらく停止させた。
由姫のことしか頭に浮かばなかった。
そんな俺をずっと何も言わずに見ていた2人だったが、ふいにばあちゃんが俺の肩を叩いてこういった。
「あんたその花の名前が知りたかとやろ?ばあちゃん花の名前は結構わかる自信があるけん、そこに連れて行ってくれんね」
「あ、う、うん」
もはや花の名前なんてどうでもよかったが、もう一度あの景色を見たいという気持ちがあってその申し出をありがたく受けることにした。
じいちゃんも一緒に来てくれると言い、3人で向かった。
歩いている間は何も話す気にはなれなかった。
ガードレールを自力で越えるのはばあちゃんは難しく、俺とじいちゃんが手を貸し何とか超えてもらった。
あの青と白の美しい光景は変わらずそこにあった。
ばあちゃんは興味深そうに咲き誇った花たちを見つめ、その名前を教えてくれた。
「これはセンニチコウやね」
「セン…ニチコウ」
耳慣れしないその単語を自分の口で繰り返す。
そんな俺を見つめたまま、ばあちゃんは無表情でずっと立ち尽くしていた。
そして決心したように固い表情で言った。
「あの子がこれ、したんやろ」
きっとばあちゃんはもうわかってる。
由姫のことを言っている。
ふとあの日のことを思い出した。
意図的にばあちゃんと由姫を引き合わせて、2人につらい思いをさせた。
ばあちゃんもしっかり覚えているだろう。
どんな気持ちでこの景色を見ているんだろう。
やっぱり嫌な気持ちだろうな。
自分の大切な息子一家を奪った男の娘が植えた花なんて、いくら植物が大好きっていったって素直に綺麗と思えるはずがない。
おもむろに俺はズボンのポケットに入れていたスマートフォンをとりだしてセンニチコウという言葉を検索にかけた。
トップに出てきた内容を見て、無意識のうちに手が小刻みに震えだした。
握っていたスマートフォンが俺の手をすり抜けて、花々の中に柔らかく落ちた。
千日紅の花言葉
色褪せぬ愛
気づかぬうちに涙が溢れていた。
由姫がこの花言葉を知って、この花を選んだかどうかは本人に聞かない限りわからない。
だけど、なんとなくあいつはそれを知ってこの花にした気がするんだ。
大会の日、由姫に何もかも忘れて幸せそうだと言って責めた俺を殴りたい。
嫉妬してあいつに酷な言葉をぶつけまくった俺を蹴り飛ばしたい。
由姫は何も忘れていない。
由姫は俺に知られずとも、この花たちを育て続けてくれたのだ。
俺が大切な場所と言って教えたこの場所は由姫にとって来るのもきつかったはずなのに。
俺はどうすればいい。
由姫のこの優しさに、勇気にどう応えればいいんだろう。