病院に入ってすぐの受付で優也のお父さんが母さんと海央の名前を言うと看護師さんが自ら案内してくれた。


向かった先にはドラマなんかでよく見る光景が広がっていた。


だけどその中央で横たわるのは女優でも俳優でもない、俺のよく知る海央だった。


体中を包帯で巻かれ、必死の延命治療が行われていた。


俺はそんな海央の変わり果てた姿を見た瞬間、優也のお父さんの背中から飛び降り、海央の近くへ駆け寄った。


意味がわからなかった。


どうしてこんなことになっているのか。


海央とは今日、いつも通り一緒に小学校に登校した。


今日の映画を楽しみにしていた。


なんでこんなことになっているんだよ。


理解なんてできなかったし、したくもなかった。


だけど、今俺にできることは遠くに行きかけている海央をこちらに引き戻すことだけだった。


「おい、海央!兄ちゃんだぞ!もう怖いものは何もないからな。映画は面白かったか?今度は兄ちゃんも行くからな。海央、もういいだろ?目を覚ませ。兄ちゃんのこと見てくれよ!!なあ!!」


声が枯れるほど叫び続けた。


無我夢中で海央に喋りかけた。


その小さな手を握って語りかけた。


だけど状態はよくなるどころか、どんどん悪くなっていった。


治療をする周りの医者たちの怒号のような声がどんどん大きくなっていく。


俺は海央のそばから引き剥がされそうになったけど、負けじと足を踏ん張って叫び続けた。