すっかり寝付いてしまった俺を優也の両親が起こしたのは決して朝になったからではなかった。


真夜中の12時くらいだったと思う。


部屋が急に明るくなり、耳元で何度も名前を呼ばれ俺は目をこすりながら体を起こした。


目を開いた瞬間に、飛び込んできた優也のお母さんは顔面蒼白で声も震えていた。


俺はそんな見たことない優也のお母さんの姿が単純に怖いと感じていた気がする。


「陸玖くん落ち着いて聞いてね。
陽子さんと海央ちゃんがね、事故にあって病院に運ばれたそうなの。
今からお父さんに陸玖くんをその病院まで連れて行ってもらうから起きれる?」



優也のお母さんは俺の肩を両手で掴んで、目をまっすぐと見つめ、ゆっくりと言い聞かせるようにそう話した。


正直、俺は寝起きで何を言われているのか全然わからなかった。


夢かなあとまで思っていたくらいだ。


だけど、優也のお母さんの顔は真剣そのもので、これは夢じゃないと少しして気づいた。


でも今度は優也のお母さんが話した内容が突拍子も無いことで俺はうわごとのように繰り返していた。


「事故って、なんで?母さんも海央も無事なんだよね?ねえ?」


その時点では本当に優也の両親も何も知らず、ただ電話で2人が事故にあったということを聞いただけらしかった。


優也のお母さんはここでこんな会話をしていてもラチがあかないと判断して、俺を無理やり抱きかかえ優也の父さんがすでにエンジンをかけていた車に俺を放り込んだ。


車はすぐに走り出し、県の総合病院へ1時間かけて移動した。