車に乗って10分ほど揺られていると、行き慣れた優也の家に着く。


大きくて立派な一軒家は俺もいつかこんな家を建てるんだって目標にしていた。


家に帰ると、優也のお母さんが玄関に走ってきて迎え入れてくれた。


「おかえり〜。汗かいたでしょう?お風呂入れてるから入ってきなさい」



体があまりでかくなかった俺と優也は一緒に風呂に入った。


風呂を出ると、テーブルの上には誕生日会のようなご馳走がたくさん並んでいて、練習で疲れていた俺たちは貪るようにして食事をした。


優也のお母さんの作る食事は毎回凝っていて、味も最高だった。


ご飯を食べ尽くして満腹になると、優也がゲームをしようと言ってリビングにあった大きなテレビにコードをつけたりしてセットをしてくれた。


俺がやりたいと言っていたソフトを差し込み、リモコンを2人でそれぞれ持ちゲームを始めた。


対戦型のゲームでルールを知らなかった俺は初めこそこてんぱんにやられていたけど、俺は元々要領が良い方なのですぐにコツを掴み優也といい勝負をできるまでになった。


途中、優也のお父さんまで乱入してきて、リビングには3人の騒がしい声が響いていた。


10時を回ると、さすがに優也のお母さんから叱られてゲームはそこで終わり、寝る支度を始めた。


いつも寝る時は優也の部屋に布団を2つひいて、横並びに寝ていた。


あの日もそうやって寝付いた。


あの瞬間まで俺の人生は順風満帆とはいなくても、慎ましい幸せにあふれていた。


辛いことも経験したけど、大切な家族と支えてくれる友人やチームメイト、見守ってくれていた大人たちのおかげでそれを乗り越えることができていた。


俺は自分を不幸だなんて思ったことはその時までは一度もなかった。