会場に入ると、ムッとした熱気に包まれていて、すでに白熱したムードが出来上がっていた。


2階の観客席に移動して美結の姿を探すけど、何面も試合コートがあるし、あまりバドミントンの試合を見たことがないせいでよくわからず困ってしまった。


透もバドミントンの試合を生で見るのは初めてらしく落ち着かない様子でキョロキョロしていた。


「ねえ、どうしよう、もう美結の試合あってるのかな?」


「試合表にのってるんじゃない?」


2人でおろおろしながら探すものの一向にわからず、困り果てていると、透が諦めたように立ち上がってどこかに行った。


行った先は数段先で見ていた2人の女性のところで、透はあのどんな女性をも虜にする甘い笑顔で試合表を指差しながら何か尋ねていた。


私が行けば適当に対応されていたのかもしれないが、透の顔面の力は絶大で、その女性たちに試合会場のことどころかバドミントンの簡単なルールまで教えてもらって帰ってきた。


教えてもらった通りに試合表を見ると、すぐにどこで美結の試合があるのかがわかり、そっちに目を向けるとちょうど今から試合が始まるようだった。


私たちがいた観客席からよく見える場所で、移動せずに済んだ。


とにかく相手のコートでシャトルが落ちれば美結の得点なんだよね。


それだけ心に留めて試合を観戦した。


だけど美結の強さは私たち素人でもわかるものだった。


フットワークが軽く、コート内至る所へ動き回り、相手が返しにくいところへ打ち込み、もはや相手に為すすべはない。


1回戦はそうやって余裕で勝ち進み、2回戦もあまり本気は出していない様子で勝ち上がっていた。


思わず見ているだけの私たちがハイタッチをしてしまうほどの素晴らしい勝利だった。


前に座っていた、よくバドミントンを知っているような口ぶりのおじさんたちも美結のことをすごく褒めてくれていて、私が誇らしい気分だった。


12時を過ぎると、全ての試合会場で試合が終わり、昼ごはんのための休憩時間がとられた。