それが約半年続いたが、卒業の時が刻一刻と迫るようになってから陸玖はたった1人の男子とは話すようになった。



もちろん元の陸玖に戻ったわけじゃない。



しつこく話しかけてくる男子に陸玖が折れた形だった。



それでも陸玖の表情はそれまでと比べると明るくなっていたと思う。



その後、高校入試、卒業式が終わり、私も陸玖もそのまま目も合わせることなく、あの島も出た。



陸玖は私の高校から少し離れた、公立高校に合格しそこに寮から通っているらしい。



サッカーの強豪校らしく、その実力は私立高校にも勝ると聞く。



陸玖は今サッカー部に所属して部活に励んでいる。



あの島にはサッカー部どころか部活なんて1つもなかったけど、陸玖の誘いで島の少年たちは至る所でボールを蹴りあって遊び始めたらしい。



陸玖はあの事件の前はサッカーをしていたのかもしれない。真剣に、満足にやっていたのかもしれない。



実力は素人が見てもわかるほどのうまさだった。



今、彼は幸せだろうか。



憎むべき相手のいない、新しい土地で大好きなスポーツをできて幸せな毎日を送っているだろうか。



笑っているだろうか。



会いたい、それが本音だ。



どれだけ隠そうとしたって、自分を騙すことはできない。



私は全身全霊で陸玖を呼んでいる。



だけど許されない。



私たちはもう二度と会うべきじゃないんだ。