手に伝わる温かさを感じるとすごく申し訳ない気持ちになる。



どれだけ感謝されようと、私はこの人たちを利用しているのだ。



幼稚園に着くまでに男の子はいくつも質問を投げかけてきて、それに答えていた。



私は話が大して上手くないから、助かった。



そして曲がり角をいくつも曲がったところで、幼稚園がある方から走ってくる女の人が私たちの姿を見つけるとスピードを上げて近づいてきた。




「龍河!」



大きく名前を呼ぶと、男の子も私の手を離して女の人の方は走り始めた。



そういえば名前を聞いてなかったなあ、



重大な情報をすっかり聞き忘れていた自分に呆れながらも無事お母さんと再会できてよかったと微笑ましく思っていた。



しばらくお母さんは自分の子供を抱きしめ続けていたが、途中で龍河くんが「お姉ちゃんがね、連れてきてくれたの」とお母さんに言うと、



慌てたように私に近づいてきて頭を下げられた。



「ありがとうございます。今幼稚園に迎えに行ったら龍河がいなくなったと聞いて、気が動転してしまって…お礼が遅くなってしまって申し訳ないです。本当にありがとうございました」



そう言って頭を下げ続けるお母さん。



「いえ、そんな大したことは。龍河くんが無事でよかったです」



そんな会話をしていると、幼稚園の先生らしき人も来て同じように頭を下げられた。



この人たちはもし龍河くんに何かあったら監督不届きで大変なことになってただろうし、ほっとしているんだろう。