もちろん、自分の分を出していなかったというのは嘘だったので私は頼まれた分だけ職員室の先生の机に置き学校を後にした。



学校から人通りの多い街中を数十分後歩くと、私と美結がお世話になっている下宿先に着く。



その下宿はお母さんやおばさんが私がなるべく危ない目に遭わないようにと行き過ぎにも思えるほどいくつもの寮や下宿所を確認した上で決めてくれた。



過保護すぎるだろうと言われるかもしれないけど、それには一応理由がある。



実は中学2年生の時、まだ島に転校する前、私が犯罪者の娘だと知った男の人から襲われそうになった。



幸い、近所の人が気づいてくれて警察を呼んでもらい助かったものの、その時に犯罪者の家族は酷い目に合わせてやってもいいという考えが静かに黙認されていることを知った。



もちろん、その考えは褒められたもんじゃないけど妥当な考えだとも言える気がする。



だけど母親の立場としてお母さんは本当に自分を責めていた。



だから知らない土地に1人で行かせるのに抵抗があったのだろう。



過保護になりすぎても仕方ないといえば仕方ない。



事情を知った美結もわざわざ私に合わせて同じところにしてくれて、そのおかげで私は何の不安もなく穏やかに日々を過ごせている。



だけど、ひとつだけ問題をあげるとしたら帰り道に人が多すぎて探してしまうことだ。



あの人を。



似たような背格好を



似たような笑い声を



見つけるとすぐに顔を確認しようとしてしまう。



そして予想通り全く知らない人で、がっかりすると同時に自分を嘲笑いたくなる。



陸玖にあったところでどうするというのだと。



いつまで経っても私が馬鹿なことは変わっていない。



未だに私は陸玖を探している。



陸玖を無意識に想っている。