「でもね、由姫は違う。
さっきも言ったけど、人が自分の罪を背負って生きることはそんな簡単なことやない。
罪を起こしたことがもちろん一番悪いけど、でもその罪を認めるのはすごく勇気がいる。
あんたのお父さんも大の男の身をしてそれを怖がってる。

でもあんたは違う。
あんたは自分の罪、いやそもそもあんたの罪でもない大きなものを認めて、背負ってここまで生きてきた」


「違う!
私だって初めは自分は少しも悪くないって思ってた…
だけど人に言われて」



思わず反論をしてしまう。



私が褒められていいはずがない。



だけど、美結は首を振って微笑んだ。



「人に言われたとしてもだよ。
むしろ人って他人に言われた方が反発したくなるもんやし。
由姫はあんたも悪いって言われて、それを素直に受け止めて、何が悪いか自分で考えて、父親の罪を認めて生きてきたんだ」



「違うんだよ!!
私はいつだって人を見下してきた。
お金を持ってることが偉いんだって勘違いして、自分が稼いだわけでもないのに、親の名声に乗っかって楽してた。
それが悪いって気づかされて、自分を変えようともしたけど変われなくて、前の学校で自分の身もわきまえないで大暴れして。
私が悪いの!!
だから褒めないで、責めてよ…」



声を振り絞って絶叫した。



怖かった。



褒められたりでもしたら、私はまた調子に乗ってしまうかもしれない。



陸玖や美結、周りの人たちを傷つけてしまうかもしれない。



もう嫌なんだ。



自分のせいで誰かを傷つけるのは。



お母さんを、凛花ちゃんを、そして何より陸玖を傷つけた。



私が誰かと幸せになろうなんて馬鹿な夢だったんだ。