「でもね、1年経ってやっと1人だけいじめに加担していた本人が謝りに来た。
それまでに親とかが謝りに来ることはあっても、本人が来るのは初めてやった。

その人はうちらの前に立つと同時に土下座して謝ってきた。
ひたすら申し訳ありませんでしたって繰り返してた。
その人は全部正直に語ったけど、その中でうち忘れられん言葉があった。
『今まで必死に自分は悪くないって思い込もうとしてた。世間や親に責められても、自分だけはその罪から逃避してると、自分は悪くないって思えた。
罪を認めるのが怖くてたまらなかった』
なんって自己中でいい加減な言い分なんやろうって思った。
そんな風に怖くなるなら初めからやるなよってお父さんはその人に掴みかかってた。


でもそれから何年も経ってその人の言ってたこと少しだけわかった。
人間みんなそんなもんなんだって。
うちはそんな人間に絶対なりたくないけど、でも人ってたぶん誰もが自分の罪なんか認めたくないんだ。
その罪が大きかろうと小さかろうと、自分が周りから取り残されんために、孤独にならんために、罪なんか認めんでみんなと肩並べて生きていきたいんだ。

あいつらのことは絶対許さん。
死ぬまで呪い続けてやるつもり。
そんで、あいつらみたいに自分の都合で簡単に人を傷つけるやつは大っ嫌い。
ニュースとかでいろんな事件あっとるけど、全員死刑になればいいのにって思う」



そこまで言い切ってから、美結は一旦大きく息をついた。



そして、冷静に私の目を見つめて言った。



「だからうち、由姫のお父さんのことは死ねばいいのにって思う。
あれだけの残酷なやり方で2人も殺しときながら、いまだに反省のそぶりも見せとらんとやろ。
そういうクズは心の底から消えて欲しい」



何度も頷いてその言葉を受け止めた。



世間一般の意見が肉声で届けられたのだ。



でも美結のその言葉はどんな中傷や非難より深みを持って私の心に届く。



それは美結が人より大切な人の命を簡単に奪われる気持ちを知っているから。