「由姫ちゃん、ごめんなさい!私最近色々あってみんなからよく思われてなくて、だから1人になりたくなくって由姫ちゃんに友達になってもらおうとしたの。卑怯だよね。
なのに由姫ちゃんはあんな風に言ってくれて…もうなんて言ったらいいか…
その本当にありがとう!」



涙をこらえているのか、鼻声になりながらそう言われた。



混乱していて文章は混雑しているが何が言いたいのかはちゃんと理解できた。



その時、私の感じたことのない高揚感が体を駆け巡った。



心からのありがとうって言葉は私の中に新鮮な風を吹き込ませた。



いいことをするっていうのはとても気持ちのいいことなんだと子供ながらに理解した。



これからはこうやって生きていこう。



自分よりも他人のために、そうすればきっと私はお父さんの呪縛から逃れられる。



そう確信した私は、穂積さんの肩を押して頭を無理やり上げさせた。



そして微笑んでみせた。



「気にしないで。当たり前のことをしただけだよ。ねえ、穂積さんのこと名前で呼んでもいい?」



「も、もちろんだよ!」



たった数十分の間に起こったその出来事はどんなに時が過ぎても鮮明に覚えている。



自分はここで生きていけるのだと信じていた。



もう誰も傷つけない、そしたらきっと愛してもらえる、本物の友達ができるはず。



穂積さん、いや凛花ちゃんと2人で笑いあっていけるはず。



だけど私はまだ甘かった。