「だめだ…」



誰にいうわけでもなく、小さな呟きが漏れた。



幸い周りには聞こえなかったらしく、穂積さんが上目遣いで私を見ているのがわかる。



私は腹を決めて、前に仁王立ちする女子たちの目を見て言った。



「だ、だめだよ、そんなこと言ったら、わ、私みんなで一緒に楽しくしたいな」



所詮悪人の娘が、善人ぶって訴えた言葉だ。



二言、三言にさえところどころで詰まってしまうのがそれをわかりやすく示している。



だいたいなんだこの小学1年生にだって馬鹿にされそうなこの文章は。



実際、小学6年生の私はこれは終わったと確信した。



これで次のターゲットは私だと。



お父さんの件が知られたわけでもないのに、早々に嫌われてしまうなんて滑稽な話だ。



だけど、それでもいいと思っていた。



私はいじめを止めようとした、それで十分だ。



ただの自己満足だったけど。



だけど奇跡的なことに、その小学校の生徒は心が広く、純粋だった。