取り巻きの女の子たちも近づいてきて口々にそう言う。



なんとなくそいつが誰なのかはわかったが、愛想笑いを崩さぬように、横目でちらりと隣を見る。



私の目には完全に怯えきった様子の穂積さんが映った。



まるでそこだけ極寒の地であるかのように、体を震わせて縮こまっていた。



そんな彼女を見ているといつのまにか私の愛想笑いは消えていた。



その嫌な雰囲気は明らかに感じ取れたけど、彼女たちを怒らせるのは私にとっていい判断じゃないはず。



だからもう一度こじつけたように笑顔を顔に貼り付けて上ずった声で尋ねた。



「な、なんで?」



私の問いかけに、彼女たちは顔を見合わせて面白そうに笑い出した。



「なんでって…ねえ〜」



そう言ってリーダー格の子が他の子に同意を求めると、次々に躊躇いなく悪口がポンポンと出てきた。



「まず見た目がさあ、デブスだし」



「由姫ちゃんには合わないよねえ」



「そうそう、しかも性格も超暗いのっ!」



「話したらまじつまんないよ、クラスみんなから嫌われてるもん」



そんな会話を聞いていたら、さっきまでの穂積さんの縋り付くような私に対する態度にも合点がいった。



私を味方につけたかったのだ。



クラス全員から嫌われて、居場所を失って、だけど孤独はつらいから、だからこれ以上1人にならないために私を利用しようとした。



都会から来た転校生であることと、それなりに整った顔立ちを持っていること(自分で言うのもなんだけど)。



私の持っているカードは強力だ。



知られたくない汚点も持っているが。



しかし、この派手な子たちがへこへこしてきているところを見たところ私はこの教室でてっぺんに登ることだって難しくはない。



それに気づいた穂積さんはこれしかないと思ったんだろう。



まあ、私から見たっていい判断と言える。



だが、私はそこまで慈善的な人間ではない。