「智ちゃん、ほんっとかっこよくなったわね~。最後に会ったのは中学くらいだったかしら?」


「そうですね」

 にこやかに智弥は返事をする。

「智ちゃん、会社でもモテるでしょ~?こんないい男、世の女性が放っておくわけないもの!確か読者モデルにも掲載されたとか言ってたことあったものね」

 あぁ、そういえばそんなこと言ってたな。高校2年か3年の時に雑誌に掲載されたとか、どっかの事務所にスカウトされたこともあったとか。
 お母さんが興奮して話してたのを思い出す。

「もう、昔の話ですよ」

 相変わらず、ニコニコしながら答えている。きっとこの手の質問はいろいろな人に聞かれているのであろう。慣れた感じで答えているし。

「あ、26歳の男性にむかって智ちゃんはさすがに失礼かしら」

 お母さんが口を押えながら言うと、

「珠子さんは特別ですよ、昔からそう呼んでくれていますしね」

 あら、なんて言って年甲斐もなく頬を染めるお母さんに冷たい視線を送る私。というか、智弥、相当モテていそうだ。女性に対してさらっと「特別」なんて言ったりして。

「そういう怜美ちゃんもきれいになって。彼氏の1人や2人いるんじゃないの?」


「この子?いないわよぉ~!ほーんと男っ気なくて困るわぁ、26にもなるのにね!」

 お母さん、そこそんなに強く言わなくてもいいんじゃないの!?
 冷たい視線から、キッと睨み付ける視線になっても、全く気にしない能天気な母。あははなんて笑っている。

「この子も似たようなもの、彼女らしき人はいるみたいなんだけど、なかなか紹介してこないし。そろそろ身を固めても良いと思うんだけど」

 彼女いるのか・・・・
 その言葉に少しショックを受けている自分に気がつく。

 いやいや、こんなイケメンが1人でいるほうが逆に問題あるでしょ、しかも結婚適齢期だし、大手企業である満元物産で働いてて、しかも本社に配属。
 
 こんなエリートが独り者なんてあるはずがない。