出て行った杏南と入れ違いで
体育館にいた生徒たちが教室に入ってくる。



静かだった教室が
とたんに騒がしくなり日常を取り戻す。



「あー!壱護お前さっきサボってただろ!」



桃汰が口を尖らせながら
俺の席の前にくる。



「あー腹いたくて」

「棒読みじゃん!モロ仮病じゃん!」



桃汰はガタッと俺の前のイスを引くと
背もたれを抱く形で俺を見て座る。





「あれ?壱護、顔赤いけどマジで体調わりーの?」


「は?別に赤くなってねーし」



桃汰に指摘されて
俺は少し慌てて頬を手でぐりぐりする。


なんか俺、ださ‥‥。


余裕あったつもりなのに
あの表情と言葉のせいで

そういうの全部ひっくり返された感じ‥‥。


俺は軽く咳払いして気を引き締めなおす。




「そういや今あの子、えっと杏南ちゃん?教室から出てきたけど、一緒にサボってた?」



「あー‥‥まぁ」


「ダメじゃん!あんな真面目そうな子をサボリにつき合わせたら」


「でも俺と杏南、付き合ってるし」


「は?マジで?いつの間に?///」


「今さっき」


「はー?!あー、だからサボったのか!///」





なにかを納得した桃汰はさっきの俺よりも
耳を赤くさせて興奮し始める。


子犬系イケメンとかってモテるけど
オタクの趣味を優先させているため


そっち系の話は疎くピュアな桃汰。


桃汰がこういう反応してくれるから
俺は逆にドンドン冷静になれる。




杏南とこうなったからには、
解決しなきゃならないこともあった。





「だから梨華にも言っといて。これ以上連絡もらってもマジで困るって」





俺の言葉に桃汰の表情が曇る。





「でも梨華‥‥俺の言うこと聞かないし」


「俺の言うことも聞かないから、兄貴のお前に頼んでんの」


「そっかー‥でも俺アイツ怖い」


「俺もだし」


「は?壱護はぜってー怖くないでしょ?」


「いや、俺もアイツこえーよ」





俺のマジな顔がツボだったのか
桃汰はケラケラ大笑いする。