力が入り過ぎた為、うっかり彼の話を遮ってしまったけれど、二ノ宮は特に気にした気配もなく、「ん?」と私が話すのを許してくれる。

私は、ゆっくりと、彼の心に届くように言葉を、想いを紡ぐ。


「あの、あのね。掟のことで私たちの為に頑張ってる二ノ宮には感謝してる。でも、無理はしてほしくないの」

『……うん』

「だから、もしも疲れたり苦しかったりしたら、ちゃんと吐き出してね」


私にではなくても、䋝田先輩や結城でもいい。

誰かに頼って、心の負担を軽くしてほしいと、最近の二ノ宮の様子が心配で伝えた。

彼のことだ。

返事はきっと、気を使ったものかもしれない。

ありがとうや、大丈夫だと気丈に振る舞ったものかも。

そう、漠然と考えていた私の耳に届いた二ノ宮の声は。


『何で?』


低く、冷たいもので。


「え?」

『桃原は、俺を信じてくれないの?』


そこに、怒りが含まれているのを感じ、一瞬、息をするのも忘れた。