「俺は邪魔したいわけじゃないし、三輪が前向きになるなら協力だってする。でも、今のあいつには、俺が何しても、何言っても響かないし、むしろ逆効果だ」


そこまで話すと、二ノ宮は小さく息を吐いた。


「鍵、閉めたのも三輪だろ?」


頼りなさげな声で問いかける彼に、私は違うよと嘘はつけなかった。

傷ついている彼の心に、私が誤魔化してさらに傷を悪化させるなんてしたくはないから。


「……見たの?」

「いや、でも普通は中に人がいるか確認するものだし、無言で閉めるなんてないだろ?」

「そう、だよね」


それは、少し考えればわかることだった。

会話はしていなかったから声は聞こえなくても、探し物をしていたから物音は耳に届くはずだ。

普通なら、誰かいるのかと確認する。

そもそも、鍵を閉める前には一度中の様子を見るものだ。

二ノ宮の言う通り、無言で閉めて鍵をかけるなんてありえない。

けれど、ありえるならば。

今の二ノ宮なら、三輪君ではと疑うのは当然だった。

ふと、肩にあった重みが消えて、奥二重の瞳が私を見つめる。


「もし、マジで俺のせいなら巻き込んでごめん」


落ち込む彼に、私は頭を振って否定した。

二ノ宮は、何も悪くないのだと。

そして、明かす。


「私の方こそごめんね。本当は、三輪君が閉めるところを見たの。でも──」

「俺の為、だろ? ありがとう」


心配していたことを。

それと、彼はそれを理解していたことを。

私たちは吐露し、弱々しくも互いを労わるように微笑み合う。