「ご、ごめんね」

「いや、すげー可愛いから許す」


そう言って、彼は仰向けのまま強く私を抱き締めた。

急激に伝わる体温と制汗剤の香りに、トクトクと騒ぎ始める鼓動。

なんだか恥ずかしくて、眉を下げ再度謝りながら起き上がれば、なぜか二ノ宮は私に動きを合わせ、抱き締めたまま状態を起こした。

必然と、二ノ宮の腿の上に跨いで座る形になり私は緊張と気恥ずかしさで身を硬くする。

今すぐ下りてしまいたい。

もう少し、このままで。

そんな葛藤に戸惑っていると、二ノ宮の頭が、私の肩にもたれかかった。


「……二ノ宮?」

「少しだけ、このままでいさせて」


吐く息は疲れを滲ませていて、心配になる。

今の今まであったはずの恥ずかしさはゆっくりとなりを潜め、代わりに新しく芽生え成長するのは、癒してあげたいという想い。

彼の全てを包み込み、受け止めてたいと望む母性。


「大丈夫?」


指輪をポケットにしまい、そっと、彼の背中に腕を回せば肩に乗った頭が頷くように微かに動く。


「うん……桃原がいてくれれば、大丈夫だよ。頑張れる」