私は当時こう思った。
幼馴染であろうと、”いいなずけ”だろうと紘との関係は変わらないだろう。
そう思った。
現に”いいなずけ”という関係になっても、なにもない。
手をつなぐでも、抱きしめるでも、それ以外も・・・なにも。
それが私と紘。
まぁまず、付き合うなんて関係でもない。
そう”好き”という感情がどちらにもない。
ただの”いいなずけ”だ。
「なんでそんな険しい顔してんだ?考え事?」
「あ、紘おかえり」
ラフな格好になった紘、つまり自称イケメンでなくなった紘が
ついでに冷たい飲み物まで買ってきてくれるあたりは、さすが私の”いいなずけ”なんだけど。
「ほらさっさと行くぞ」
「はいはい」
まだ遊園地にたどり着いてないのは紘の寝起きの悪さと、
自称イケメンのためのスーツを着替えてたせいなんだけど?
まぁ、許してやろう。
いまからが本番なのだから。