「寝てねーよ。田村の話ばっかりだなって、退屈してたんだよ」
たしかに最近は田村くんのことを口にする機会は増えたかもしれないけど……。
「そ、それは美樹ちゃんが田村くんのことを……」
「うん、それでも最近は田村のことばっかり」
眠いわけじゃなく機嫌が悪かっただけなんだと、ようやく気づいた。
「ハチ、もしかして拗ねてるの?」
からかったわけじゃない。それでも気にさわったようでハチはどんどん不機嫌になっていく。
「そ、そんなに怒らないでよ。私なんてハチと違って全然モテないし、男子の話も滅多にしないんだからたまにはいいでしょー。それに田村くんはハチの友達……わっ!」
言葉が言い終わる前に、そのままベッドに押し倒された。
視界は天井ではなく、ハチの顔。濡れ髪が普段の可愛い雰囲気のハチを消していて、ふわりと同じシャンプーの香りがした。
「ナナがモテないのは俺がナナに他の男が近づかないようにしてるからだよ」
ハチが私の髪の毛をわざとすくいあげる。