「先輩は自分で作ってるんですか？」

美樹ちゃんが私の膝の上のピンクのお弁当箱を指さす。


「そうだよ。夕ごはんの余りものとか冷凍食品とか、けっこう手抜きだけどね」

私はそう言ってお弁当のフタを開けた。すると美樹ちゃんは「わあ！美味しそう……！」と、目を輝かせていて可愛すぎて胸がキュンとなった。


考えてみれば後輩の子と接する機会ってなかったし、先輩風を吹かせるわけじゃないけど、初々しくてつい私も笑顔が溢れてしまう。


「よかったら食べる？」

「ええ！？いいんですか？」

「うん、もちろんいいよ」

私は美樹ちゃんにお弁当を差し出した。

やっぱり作る側としてみたら、こうして喜んでくれるのがなによりも嬉しい。


だから私は忙しい朝でもハチのお弁当作りは欠かさない。それが唯一の楽しみだ、なんてハチは食べるのを心待ちにしてるぐらいだし。


「じゃあ、交換しましょう！私は学食のもので申し訳ないんですけど……」

「はは、全然大丈夫だよ！むしろ嬉しい。ずっと食べてみたかったから」


交換してもらったそぼろ弁当は予想以上に美味しくて、うちの学食のクオリティーの高さを知った。

私はいつものり弁か鮭フレークだから、たまにはこうやってそぼろでもいいかもしれない。