「わ、私髪の毛乾かすからさ!」
慌ててハチの体を離して棚にあるドライヤーを指さした。
ハチが彼氏でも半年付き合っていても、こういう場面はやっぱり慣れない。
「そうやってすぐ逃げる」
ハチがまたため息。
「だ、だってさ……」
「だって?」
「幼なじみでいた時間が長かったからその……」
好きな気持ちはある。ハチが誰よりも大切。
だけど私にはまだ飛び越えられない一線がある。
「じゃあ、幼なじみに戻る?」
ドキッとして再びハチに駆け寄った。
「イヤだっ……」
幼なじみの関係も特別だったけど、今の関係のほうがもっと特別だ。だって堂々とハチの隣にいられる。
周りからなんて言われようと、私がハチの彼女でいたい。
「ごめん。冗談」
ハチが私の頭を優しく撫でる。
「幼なじみでいた時もナナに触ってたけど、今は触りたいって思って触ってる。それだけは覚えといて」
ハチはニコリと笑ってまた漫画を読みはじめた。
ここで抱きついたら、どうなるのだろう。
そうしたかったけど、なんの覚悟もないし手を繋ぐだけの恋愛じゃないから。
ちゃんとハチも私も、もう高校2年生だから。
私も変われるところは変わりたいって思った。