まさか田村くんの名前が圭介だったなんて知らなかった。みんな名字で読んでるし、田村くんと同じクラスになったことも名前を知る機会もなかったから。
私はいい。仕方がない。
でもさ、どうしてハチまで知らないの?
同じクラスで友達なのに……!って、そこをハチと口論しても意味がない。
「とりあえず好きなものでも頼んでください!私が奢りますから!」
さっきまでモジモジと顔を赤くしていた後輩は吹っ切れたように明るい。そして何故か私たちは駅前のファミレスにいる。
「おふたりに話を聞いてほしいんです……!」と切実に頼まれたら、さすがに断れない。
「じゃあ、とりあえず飲み物でも……。私はアイスティーで」
まだ後輩の頼みがなんなのか分からないけど、飲み物ぐらい頼まないと間が持たない。
もちろん理由はどうあれ後輩に奢られるのは心苦しいからちゃんと自分で払うつもりだけど。