いつも一緒にいるから特に何か意識したこともなかったけれど、松本先輩だって男の人だ。こんな恥ずかしい姿、見せられる訳がない。
とりあえず、首からタオルを下げて、胸元を隠すようにしてから、先輩のところに戻ってきた。
「こ、これで大丈夫ですか………?」
「だ、大丈夫じゃないかな、ごめんね変なこと言って」
「い、いえ、先輩に言われるまで全然気づきませんでした」
なんだかお互いにぎこちなくなってしまっている。早く切り替えなければ。
「じゃあ、パート練、始めよっか。楽譜、持ってきて」
「はいっ!」
私は自分のカバンから「雲の信号」の楽譜を取り出す。だが────
「えっ………」
「どうしたの?広野さん」
「楽譜、濡れてる………」
「えっ?どれどれ………うわ、これはひどい……!」