私はちょうど1年前の今頃、この部活見学で松本先輩に言われたことを思い出していた。
そして、先輩に言われたことを再現していく。
「じゃあ、まずは、この吹き口…マウスピースって言うんだけど、これで音を出してみよう」
私はユイちゃんとエリカちゃんに学校の楽器のマウスピースを渡す。
「持ち方は、こう。……そうそう。
これに、こうやって唇を当てて、息で唇を振動させるの。こんな感じでね」
私は自分のマウスピースを、ぷぅーーっ、と吹いてみせた。
1年前はこうやって音を出すだけでも難しかったけれど、今となってはもうすっかり身についている。
「それじゃ、ユイちゃんとエリカちゃんも、一緒にやってみよう」
私がそう言うと、ユイちゃんとエリカちゃんも、少し戸惑いつつも、私の真似をしてマウスピースを吹き始める。
スゥーーーーッ………ぷぉーーーーっ。
ユイちゃんが、早速音を出した。
「そう、ユイちゃん、上手!その通りだよ!」
一方、エリカちゃんの方は、スースーと息が抜けていくだけで、なかなか音が出ない。
「マウスピースと唇の間に隙間ができてると、うまくいかないよ。隙間を作らないようにして、程よく力を抜いてみて」
私がそう言うと、エリカちゃんはまたマウスピースを一生懸命吹き始める。
なかなか音が出なかったが、何回か吹いてみて、やっと、音が出た。
「すごい!できるようになったね!じゃあ、今度は、楽器を吹いてみよう」