――ユリカさんはまた籠のなかの鳥になってしまった。
「…親に逆らおうとは思わなかったんですか?」
あたしも両親やお兄ちゃんたちに溺愛されて、門限とか、出かけるときは執拗に場所を聞かれたりとか、いろいろと行動を制限されて育ってきたほうだけど、
友達と遊んだりしているとつい時間が経つのを忘れて帰るのが遅くなったり、諦めて『もういいや』って門限をぶっち切っちゃったりしたことも多々ある。
危険だから近寄っちゃダメっていう場所にも言い付けを無視して何度も遊びに行ったりもした。
そんなときはパパのゲンコツが容赦なく飛んできたり、見たいテレビがあるのに延々と2〜3時間はお説教を聞かされたりした。
でも子供って懲りないから何度もおんなじ過ちを繰り返しちゃうんだよね。
そうやって“悪いこと”は何度も繰り返して、そのたびに親に叱られて“悪いこと”なんだって認識を自分のなかで強めていくのに。
なのにユリカさんの場合は、親に反抗すらしたことなくて、自分は『自由じゃない』と最初から諦めている。