「…そうなんですか?」



「大学を卒業してね、すぐに親に決められた男性と結婚させられたの」



「え…」



あたしは目を丸くした。



今の自由な時代にまだそんなのがあるんだ。



よっぽど家柄のいいお嬢様だったんだろうな。



どうりでこんな高い車に乗れるわけだ。



きっと旦那さんも御曹司か何かだよね――?






ユリカさんは幼い頃から親の言い付けを守って、親の敷くレールの上だけを歩いてきた。



幼稚舍から大学まである伝統の有名私立に通って、学校が終わるとお稽古ごと漬けの毎日。



仲のいい友達と遊ぶことも、恋人を作ることもできない日々を大学卒業まで送っていたらしい。



でもそんな息の詰まる生活も大学卒業とともに終わるんだ、そこから自分の人生はようやくスタートするんだ、自由になれるんだ、そう思うことでユリカさんは窮屈な生活をじっと耐えていたんだそうだ。





だけど…





大学卒業とともに待っていたのは、親に決められた見ず知らずの男性との結婚だった――