「でも…」
「…あなた、こちらの店長さん?」
ユリカさんがあたしの名札を見ながら言う。
名札には【店長 村瀬】と書かれてある。
「はい」
「じゃあ彼の上司なのね?」
「はい」
だから部下の不始末は上司のあたしの不始末ということにもなる。
「一応は」
「一応?」
「同い年で同期なんです、福嶋くんとは」
実際は福嶋くんのほうが上司に感じることもしばしばあるけど(笑)
えらそーだし、あたしより仕事デキるし、完璧だし。
だけど形式上はあたしの方が上司だ。
「2人ともまだお若いのに、こんな大きなお店のトップとして頑張ってるのね」
「雇われ店長と副店長、ですけどね?」
あたしが笑うと、ユリカさんは少し寂しげな表情で相槌をうった。
「…私は働いた経験がないから、仕事というものがどういうものかさっぱり分からないわ」
え…?
働いた経験がない?