「あの!」



バッグからキーケースを取り出したユリカさんがあたしの呼びかけに気づいて辺りを見回した。



あたしはユリカさんのもとに走り寄る。



「…はぁ……はぁ…」



日頃の運動不足が祟って息を整えるのも一苦労だ。



ユリカさんはそんなあたしを苛立つことなくのんびり待っていてくれた。



「あの…」



ようやく息の整ったあたしはユリカさんと向き合う。



自分とあまり背丈の変わらないユリカさんだけど、やっぱり漂っている気品は自分には備わっていないものだから面と向かうとちょっと畏縮してしまう。



ほんとは気安く声をかけたりできないほどの相手なのかも知れないしね。





「何か?」



ユリカさんは可憐に微笑むも、どこか生気がないように感じる。



「すみません。福嶋があのような態度で」



「ああ…あなたが謝る必要なんてないわよ。
それに私…お客として来たわけじゃないし」