「ごめんなさい…」
ユリカさんが弱々しい声音で謝っている。
「あなたとは1回きりだって分かっていたけど、でももう一度だけ会いたくて」
ユリカさんが切ない声の調子でそう言うと、福嶋くんが煩わしい感じでため息をついたのが聞こえた。
「こんなところで…やめてもらえませんか? 俺はああいう商売する気はないし、あなたとはあの日限りで、今後頻繁に会う気はありませんから」
毅然と言い放つ福嶋くんに、ユリカさんは口をつぐんでいるようだった。
「帰ってもらえませんか? 勤務中なんで」
「待って…終わるまでどこかで待っていたらダメかしら。もう一度…もう一度だけあなたと話がしたいの」
「すみません。俺には話すことなんてないんで」
福嶋くんは軽く頭を下げると、追いすがるユリカさんを無視してバックヤードに消えていった。
振り返った際にほんの一瞬あたしを見下ろした福嶋くんの瞳は、何だか憎しみのこもったような色をしていて…
目が合った瞬間、背筋がゾクッと震えた。
…なんで、
そんな目をするの――…?
次章≫≫≫手に入らないモノ。