「福嶋くん。お客さん」



「客?」



パソコンに向かっていた福嶋くんが顔を上げて眉をひそめた。



「うん。綺麗な女の人だよ。常連さんかなぁ。あたしは見たことない人だった」



「常連? 向こうにいたときのかな…。こっちに来てからは俺、ほとんど店頭に立ってないから俺についてる常連なんていないと思うけど」



「とにかく来て。呼んでるから」



「…分かった」





あたしは福嶋くんをカウンターのそばで立っていた女性のところまで案内した。



あたしたちが来るまで後ろを向いていた女性がタイミングを計ったように振り返る。



福嶋くんの姿を見るなり切なげに表情をゆがめた。





「ユリカさん…」





え…?



傍らに立つ福嶋くんがぽつりと呟いた。



その表情には驚きと戸惑いが入り混じっていた。







――ユリカさん…?