「空閑(くが)。行ってくれ」 「御意」 一瞬だけ姿を見せた鎧姿の式に肯き、門叶に座れと座を示した。 門叶は、若い女性の姿で、浴衣のような衣に薄い領巾が腕を巻いている。 「………ご主人様」 しおれた門叶。 「門叶。耳出とるぞ」 はっと頭を押さえる式を横目にしてから、古人はまた問う。 「門叶。……黎は昨日、どこへ行った?」 「わかりません」 「わからん……? お前、昨日いなかったろう」