《ご主人様》
 

隠形(おんぎょう)――姿を視認できないよう隠――したままの式(しき)に呼ばれ、小埜古人は一度瞼を下した。


「どうだった?」


《何やらにやにやしておりました》


「……は?」
 

式の報告に古人が胡乱に訊き返せば、


《にまにま――とも言えましょうか。いつもの夜歩きかと思ったのですが、明らかに浮かれております。ふわっふわしております。

一応おなごの私としては気味悪いです。もう見ていたくなかったので帰ってきました》