真紅は実際、死にかけていた。
真紅は深く考えていないようだったが――前後の状況が異常だ。
真紅は襲われた瞬間のことは憶えていないのか、見ず知らずの黎に対しても、恐怖していなかった。
警戒はされていたが、それは自分のアホな言動の所為かと思う。
自分、吸血鬼とか普通に聞いたらまともではないことを初っ端から名乗っているし。
人間の世界で考えれば、通り魔だが……。
そうではないだろう。
でもあれ――黎が見たところ――真紅を殺しかけていた傷が問題だった。
刃物ではない。
人間によるものではない。
傷にまとわりついていた妖気(ようき)がそれを教えた。
ならば自分たちと同じ、妖異怪異(よういかいい)の類か。