「紅亜さん? こんばんはー」
 

妙に間延びした挨拶がかけられた。
 

紅亜が顔をあげれば、真紅の隣の部屋に住む子だった。


「舞子(まいこ)ちゃん。こんばんは。今帰り?」


「はい。紅亜さんも、真紅ちゃんのとこですか?」
 

麻生子は近くの病院で看護師をしている。
 

夜勤もあるので滅多に顔を合わせることはなかったが、学生の頃からお隣なので、真紅とも紅亜とも仲がいい。
 

……紅亜は舞子にだけ、本当は恋人などいないことを話してある。
 

お隣さんに、真紅に対して見捨てられた子、などと思われるのは嫌だったし、真紅の知らない本当を知っている人がいてくれれば、紅亜自身が安心するのもある。


「うん。……海雨ちゃんは、まだ入院してるの?」
 

海雨が入院しているのは舞子の勤務先だ。