「真紅ちゃんを助けた、ねえ……」
 

帰り道、紅亜は夜天に呟いた。
 

真紅の暮らすアパートから離れて、独りで暮らしている家へ。
 

真紅に本当のことは伝えていない。
 

紅亜には恋人などいない。
 

独り暮らしだ。
 

年頃の娘を独りで置いておくなんて、自分でも不用心で危ないことだとわかっている。
 

けれど、自分と一緒にいる方が、娘にはずっと危険だった。
 

真紅は何も、知らないから。
 

教えていないから。


(教えるには、真紅ちゃんは血が濃すぎる……)
 

そして自分は、無能だ。
 

紅亜は、自分伝いで真紅の存在が知られないように、離れることでしか娘を護ってやれない。