目尻が下がり、唇が薄く開き小さな笑顔になる。


「こうすると、ちょっと気持ち楽にならない? 自分以外の何かを信じるって、逢いたいと思ってる相手も信じてるって感じじゃない?」
 

紅亜は娘の頭をぽんぽんと叩いた。
 

――これももう少しで、取って替わる人物がいるのだろう。


「……思っててくれるかな」


「わからないから信じるんじゃない」
 

相手を。
 

その前に、自分を。
 

逢いたいと思っている気持ちは、自分しか持っていないものだから。
 

その気持ち一つ、信じて。
 

大事に抱いてあげて。


「私、ママすきだなー」


「私だって真紅ちゃんが一番すきだからね」
 

自然と生まれる笑顔。
 

恋に迷ったら、こういう道もあるんだ――。
 

この初恋、いつか……。