“あの日”より、NINAとしてこの町に棲んでいた時より、トラウマの元凶となるあの時より、

私は確実に強くなった。



恐怖なんかに、負けない。


負けたくない。



独りでだって、立ち上がれる。





私は真っ黒な傘を置き去りにして、ゆらりゆらりと廃校をあとにした。


まだ戦慄は治まらない。




神雷のたまり場近くで、傘もささずにキョロキョロ辺りを見渡している、朔と真修がいた。



「あ!幸珀!」

「やっと見つけた……!」



駆け寄ってくる2人に、安堵する。


探してくれてたんだ。



瞬間、ようやく戦慄しなくなった。




「ったく、いきなりどっか行きやがって。びしょ濡れじゃねぇか」


「2人もね」


「はいタオル、これで拭いて」


「ありがと」




真修に渡されたタオルを、頭の上に置いた。