家に帰ったら、お母さんとお父さんに全力で心配され、その日初めて心から笑えた。



次の日、普段通り円堂幸珀として先生に挨拶したら、思いっきり恐れられた。しかも、これが卒業まで続く。ウザいったらない。




“あの日”の暴力沙汰を、たくさんの野次馬が目撃していたせいで、学校では私はすっかり問題児扱いされていた。



まったく、ひどいものだ。殴ったのは事実であれ、私はいじめを止めたのに。


内心そう愚痴りながらも、私はいじめの件は何も言わなかった。



終わったことだ。言わなくていい。

面倒くさい。どうでもいい。



過去は、所詮、過去だ。





学校だけでなく、私の住む町……特に繁華街を中心に、瞬く間にNINAの存在が知れ渡った。



思わず仁奈さんの名を告げてしまったことに、少し胸が痛む。


けれど、「NINA」という異名を名乗ることで、仁奈さんをいじめた残りの連中を、先生にしたみたいに脅しやすくなった。



復讐劇を終えるまでの短い期間に、私は主に繁華街で、弱い者いじめをしてる奴らを叩きのめしていった。




そうしている内に、不良達の間で、ある忠告が囁かれるようになった。




『NINAには油断するな。あいつは化け物だ』