昨日の帰り道でお母さんと、『ねぇ、幸珀。決していじめをしてはダメよ。いじめはね、時に人を殺すの。だから、誰かがいじめられていたら、助けてあげてね』と約束した。


そう、約束したんだ。




――だから、私は、“悪”に溺れる。





不良達がさらに何か言おうとする寸前で、声は失われた。


ドスッ、と私が殴ったからだ。



その日の私は虫の居所が悪くて、弁明の余地も、反撃のチャンスも与えずに、ただ一方的に力の差を見せつけた。



『な、なんだよ、このガキ』


『ば、化け物……!』



確かに、そうかも。

私は、異常な化け物だ。


納得してる自分が、なんだかおかしかった。




気づいた時には、不良達の餌食になっていた男子中学生は逃げていた。


最後の1人となった不良が、震えながら口を開く。



『お前は、一体、何者なんだ……っ』




返答してあげたのは、しいて言うなら、単なる気まぐれだった。







『NINA』